握力計の代用になる家にあるもの4選!体重計での測り方のコツと医療現場の簡易チェック法
「自分の握力を今すぐ知りたいけれど、家に握力計がない……」 学校の体力測定を控えた学生の方や、日々のトレーニング・フィットネスの成果を自宅で手軽に確かめたいとき、わざわざ専用の器具を買うのはためらいますよね。
ネット上には「スマホアプリで測れる」といった情報もありますが、実は現在のスマホの構造上、画面を押しても正確な筋力は測定できません。
では、身近なもので代用する方法はあるのでしょうか? この記事では、安全かつ簡単にできる簡易チェック法を解説します。医療・介護現場で指標とされる器具を使わないスクリーニング方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
※本記事で紹介する内容は、公式な測定値に代わるものではなく、あくまで自宅でできる簡易的な目安・トレーニングのモチベーション維持を目的としたものです。
握力計の代用とは?器具なしで筋力の目安を知るアプローチ
握力計は、前腕の筋肉や手のひらの握る力を「kg」という単位で数値化する専門器具です。 手元に握力計がない場合、以下の2つのアプローチで「代用」および「簡易チェック」が可能です。
物理的な数値を応用する:体重計など、圧力をキログラム(kg)で表示できる既存の器具を挟み込む。
身体の連動性(相関関係)を見る:健康維持の指標として、握力と比例しやすい他の部位の筋肉量や動作をチェックする。
日常のヘルスケアにおいて「先月より力がついたか」といった相対的な変化(トレンド)を知るためであれば、身近なもので十分に代用可能です。
家にあるもので握力を測定・代用する4つの方法
1. アナログ・デジタル体重計を挟み込む(数値化ルート)
最も手軽に「〇〇kg」という数値をプロットできる方法です。
準備するもの:一般的な体重計(側面がフラットで、両手で挟みやすい形状のもの)
測定の手順:
体重計を床に対して垂直に立てる(または胸の前で構える)。
測定したい方の手のひらを天面に、もう片方の手を底面に当てる。
脇をしっかり締め、肘を90度に固定して、測定したい手でグッと全力で押し込む(逆の手は支えるだけ)。
液晶に表示された数値を読み取る。
【アドバイス】
体重計を挟み込む動作では、手のひら(握力)だけでなく、胸の筋肉(大胸筋)や肩の筋肉(三角筋前部)の押し出す力がどうしても上乗せされてしまいます。 結論として「体重計での測定値から、おおむね15%〜20%を差し引いた数値」が、実際の握力に近い目安となります。例:デジタル体重計の表示「53.5㎏」の場合→握力の推定値は「45㎏」
2. ハンドグリップの強度で推測する(100均の活用)
ダイソーなどの100円ショップにはデジタル握力計こそありませんが、トレーニング用の「ハンドグリップ」が豊富に揃っています。
準備するもの:100均のハンドグリップ(15kg、25kg、30kg、40kgなど)
測定の手順:
各強度のハンドグリップを握り、左右のプレートがカチッと合わさるまで完全に潰せるか試します。
「30kgは余裕で潰せるが、40kgはビクともしない」であれば、現在の握力は概ね30kg〜35kgの間にあると推測できます。
3. 新聞紙1面を片手で丸める(スピード・硬さチェック)
道具の破損リスクがなく、指先の細かな筋力(ピンチ力)までチェックできる方法です。
準備するもの:新聞紙1面(見開きではなく1枚分)
測定の手順:
新聞紙を机の上に広げ、測定する手だけで端を掴みます。
反対の手は一切使わず、指先と手のひらだけで新聞紙を内側にクシャクシャと巻き込んでいきます。
「3秒以内」に、手のひらの中に完全に収まる小さな球体にできれば、一般的な成人男女の平均的な筋力が維持されている目安となります。
4. 500mlペットボトルを指先で潰す
準備するもの:空の500mlペットボトル(炭酸用などの硬いものではなく、エコタイプのお茶などの柔らかいボトルが最適)
測定の手順:
ボトルの側面を親指と残りの4本指で挟み、パキッと音がして中央が完全に潰せるか試します。
これを親指と人差し指、親指と中指……と指を変えていくことで、握力の土台となる各指の支持力を簡易チェックできます。
看護・福祉の視点:器具を使用しない健康・筋力スクリーニング法
公的なリハビリテーションや介護予防の現場では、器具を用意できない環境での簡易的な身体機能評価(スクリーニング)として、以下のような指標が学術的に用いられています。これらは全身の筋肉量と握力が比例関係にあることを応用したものです。
「指輪っかテスト」(サルコペニアの簡易評価)
東京大学高齢社会総合研究機構などが考案・提唱している、器具を一切使わない有名なテストです。
やり方:両手の親指と人差し指で円(輪っか)を作ります。利き足ではない方のふくらはぎの最も太い部分を、その輪っかで力を入れずに囲みます。
評価の目安:
囲めない(肉がはみ出る):筋肉量がしっかり保たれている(握力も維持されている可能性が高い)。
ちょうど囲める・隙間ができる:全身の筋肉量が減少しているサイン(握力低下のリスク)を示唆します。
「5回椅子立ち上がりテスト(5-Times Sit-to-Stand Test)」
下肢の筋力を測るテストですが、全身の運動機能および握力の総合的な傾向と相関があることが知られています。
やり方:胸の前で腕を組み、椅子から「立つ・座る」の往復を全力で5回行い、そのタイムを計測します。
評価の目安:一般的に高齢期において、5回立ち上がりに11秒〜12秒以上かかる場合は、運動機能や筋力(握力含む)の低下に注意が必要なサインとされています。
効率よく測定の精度を上げるためのコツ
代用方法でより確かな変化を捉えるためには、毎回「同じ条件」で行うことが不可欠です。
測定の時間帯を統一する:人間の筋力は、起床直後は低く、夕方に高くなるバイオリズムがあります。検証は常に同じ時間帯(例:入浴前など)に行いましょう。
左右2回ずつ測って「最大値」を記録する:1回だけだと力み方にムラが出ます。少し時間を置いて2回計測し、調子が良かった方の数値を自分のベースと捉えるのが、一般的なスポーツ測定のルールに準じたコツです。
注意点:代用測定を行う際のリスクと安全性について
身近なものでの測定は手軽な反面、以下の限界とリスクを理解しておく必要があります。
精密機器の破損に注意:特にデジタル体重計は、上からの荷重(垂直)に耐える構造です。横から無理に強い力で挟み込むと、外装プラスチックの割れや、内部センサーの故障を招く恐れがあります。行う際は無理のない範囲で、怪我に十分注意してください。
健康・医療判断に関する配慮:本記事で紹介した代用データやスクリーニングは、あくまで健康維持のモチベーションや目安です。「自分の筋力が著しく衰えているのではないか」といった医学的な不安や不調がある場合は、自己判断せず、必ず専門の医療機関(整形外科やリハビリテーション科など)を受診し、医療国家資格を持つ専門家のもとで正確な評価を受けてください。
公式記録としての効力はない:学校のスポーツテストや、各種採用試験(警察・消防など)の提出書類には当然使用できません。公的な数値が必要な場合は、後述の「無料で測定できる場所」へ足を運ぶことを推奨します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 無料(または格安)で本物の握力計を使える場所はありますか?
A. 地域の公営ジムや自治体のスポーツセンター、献血ルームなどで利用できる場合があります。 市区町村が運営している体育館やトレーニングルーム(利用料100円〜数百円程度)には、体力測定用具としてアナログやデジタルの握力計が常備されていることが多いです。窓口のスタッフやトレーナーの方に「握力を測ってみたいのですが、器具はありますか?」と尋ねてみると、快く貸してもらえるケースがあります。
Q2. スマホの「握力測定アプリ」の数値は信頼できますか?
A. ゲーム・エンタメ要素として楽しむものであり、実際の握力計測としては使えません。 現代の一般的なスマートフォン画面には、加わった圧力の強さ(kg)を精密に識別する「感圧センサー」は搭載されていません。アプリストアにある無料の測定アプリは、画面を連打する「タップ速度」や「タイミング」を計算式に当てはめて数値を疑似的に算出しているものが大半です。
Q3. 握力を測りたいとき、握力計のレンタルは個人でも可能ですか?
A. ネットのレンタル業者等で可能ですが、個人向けには購入の方が安くなるケースもあります。 フィットネス機器のレンタルは可能ですが、往復送料などを含めると数千円かかることが一般的です。もし定期的に正確な数値をトラッキングしたい場合は、ECサイト等で2,000円前後に販売されている家庭用のデジタル握力計を一台購入してしまった方が、結果的にコストパフォーマンスが高くなるケースが多いです。
まとめ
家に握力計がないときは、「体重計で挟み込んだ数値から15〜20%引く」ことで大まかな数値を推測したり、「指輪っかテスト」や「新聞紙丸め」で平均的な筋力を維持できているかをチェックできます。 スマホアプリなどの手軽なツールも魅力的ですが、その仕組みを理解した上で、安全に配慮しながら日々のフィットネスライフに役立ててみてください。
参考文献
田中 喜代次(編著)『新・うきうき健康エクササイズ — 体力測定と運動プログラム』
東京大学高齢社会総合研究機構(IOG) 「指輪っかテスト」 サルコペニア・フレイル予防啓発資料
厚生労働省 e-ヘルスネット 「サルコペニア(sarcopenia)」に関する一般的定義・運動機能評価指標の概要
日本理学療法士協会 理学療法評価学における「5回椅子立ち上がりテスト(5CSST)」の特性と標準値に関する知見